錦鯉の稚魚を上手に飼育するためのマニュアルです。一度コツさえ掴んでしまえば誰でも楽しんで飼育する事が出来ます。是非参考にして見て下さい。
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簡単!必見!稚魚飼育マニュアル

稚魚飼育マニュアルをご覧いただき、誠にありがとうございます。このマニュアルは、「稚魚飼育をしてみたいけど、ちょっと難しそう。」「飼育してみたけど、なかなかうまくいかなかった。」など、様々なお客様のご意見を参考に、出来るだけ簡単にわかりやすくまとめたものです。稚魚飼育は一見難しそうですが、コツさえつかめば誰でも簡単に楽しめます。日々成長し、変化していく姿には例えようのない喜びがあります。是非このマニュアルを参考に、稚魚飼育にチャレンジしてみてください。また、毎年年末に稚魚飼育写真品評会を開催しています。出品点数の増加、全体の更なるレベルアップにつながれば幸いです。

                                                 []水槽準備

◆ガラス水槽、FRP水槽、シート池など

 FRP水槽、シートなどを使用する場合、青、水色、薄緑、黄、赤などの色は避けましょう。あくまで昭和三色を飼育する場合ですが、上記のような色の水槽で飼育すると極端に出来が悪くなります。出来れば黒、濃い灰色、又はコンクリートなどの水槽が理想的です。
 お持ちの水槽が青い場合は、エンビ系の黒い塗料(品名例:エンビコート、ビニロックなど)を塗ったほうが良いでしょう。シンナーと混合して使うタイプで耐久性が強く、魚毒性も低く安全です。水性、油性のペンキはすぐに剥がれてしまいますし、魚毒性も不明ですので避けましょう。

◆濾過槽は必ず付けましょう。

 濾過槽を使用することにより目に見えるゴミは当然ですが、目に見えない有害物質を浄化処理します(生物濾過)。この働きがないと、良い鯉が出来ないばかりでなく病気の発生~死亡の確率が非常に高くなります。

 濾材はお好みのもので結構ですが、PH(ペーハー)を維持する為にカキ殻を少し入れた方が良いと思います。またブロワに余裕があれば濾過槽にもエアーストーンを入れましょう。濾材に付着している浄化細菌は酸素を沢山消費します。逆に言えば酸素が少ないと浄化細菌がうまく働かないという事です
  
 ※初期の段階では循環ポンプは弱いものを使用しましょう。循環が強いと稚魚が吸い込まれたり、水流が速い為に体力がなくなり死亡してしまう可能性があります。

◆殺菌灯を付けましょう。

 殺菌灯を使用することにより病気発生の軽減、またアオコの発生を抑制します。昭和三 色の場合、稚魚の時期にアオコが発生して水が濁ると墨、緋盤ともにぼけて極端に出来が悪くなります。殺菌灯を使用して出来るだけ透明度の高い飼育水を心がけましょう。また、殺菌灯の設置場所ですが、沈殿槽もしくは濾過槽の中で濾材に光が当たらない所にし  ましょう。濾材に光が当たってしまうと浄化細菌を殺してしまうので、注意してください。

◆水作りをします。

①稚魚が到着する1週間程度前から新しい水を張り、濾過槽を回しておきます。こうする事で水がこなれて、稚魚にとってストレスの少ない水になります。 

※他の鯉を飼育している水は絶対使用してはいけません。稚魚の段階ではまだ眠り病等の免疫がありませんので、多 年魚等の水が入ると全滅してしまう可能性があります。

②稚魚が到着する前に、循環のチェックをしましょう。循環が強すぎないか、循環口に稚魚が入る隙間はないかチェックします。稚魚Aをご注文されたお客様は、到着後23日は循環もエアーも止めておいてください。Aは孵化して5日程経過した稚魚です。とても小さいので酸欠になることはありませんが、輸送時のストレスや疲れにより体  力が低下しています。少しの波でも池や水槽の縁に押し流され、弱って餌も食べる事が出来ずに死んでしまう事があります。様子を見て一回り大きくなってきてから循環を開始しましょう。また、循環口に稚魚が吸い込まれないようにネットを張っておいた方が良いでしょう。稚魚Bの場合も初期は弱い循環でスタートしてください。

簡単ポイント!水槽準備編

①水槽は黒、濃い灰色、又はコンクリートが最適です。(青色系はエンビ塗料などで黒く塗りましょう。)

②濾過槽は必ず付けましょう。エアーを入れ、カキ殻も入れた方が良いです。

③殺菌灯を付けましょう。濾材に光が当たらない場所に設置して下さい                                                

④稚魚到着1週間程度前から循環を回し、水作りをしましょう。

⑤稚魚Aの場合は到着後23日は循環を止めて様子を見ましょう。

⑥他魚の飼育水は絶対入らないようにしましょう。
 

[] 稚魚到着時

◆水温合わせをします。

①到着した袋ごと水槽に30分~1時間程度浮かべておきます。

②その後袋を開け、水槽の中の水を少しずつ入れて慣らせます。

③ゆっくりと水槽の中へ放してください。

※到着した当日は輸送等のストレスがありますので、給餌は控えましょう。(水槽の中にミジンコを入れている方はそのままで結構です。

[Ⅲ]給餌について

◆稚魚Aの餌付け

 稚魚A(孵化後5日程度)の場合、到着後23日がとても大切です。その間循環、エアーは止めておき、ミジンコやブラインシュリンプで育てるのが理想的ですが、難しい方は初期の細かい餌が同梱されて行きますので、更に指で揉んで粉末に近い状態にして与えてください。23日経過したら循環を開始しますが、水流が強くならないよう注意して調整しましょう。

◆給餌量について

 個々の環境(水温、水量など)によって随分差が出ますので分量などは明記出来ませんが、重要な事は「与えすぎない事」です。特に初期の段階では様子を見ながら無理せず給餌してください。餌を与えすぎると、水質の悪化、鰭が裂ける、エラがやられる、などの症状が現れ、結果死亡という事になりかねません。給餌は慎重に行ってください。

◆給餌回数について

 水温が20℃を超えるようになって来たら一日35回程度給餌しても良いでしょう。鯉は胃袋がない為、例えば一日一回で100グラム与えるよりも、一日五回で100グラム(一回20グラム)与える方が太りも良く効果的です。一回分の量は少なく回数は多くという給餌方法が理想的です。また、夜は水温が下がってしまうという場合は、夕方の給餌は控えめにします。夕方沢山餌を食べて、消化する夜になってから水温が下がってしまうと消化不良を起こしてしまい、体調を崩してしまう事があるからです。

簡単ポイント!給餌編

餌は与えすぎに注意しましょう。
一回の分量は少なめに、回数は多くを心がけましょう。

[] 水質管理

◆糞抜き

 糞抜きは毎日行いましょう。多給餌の時期は朝晩の二回行ってもかまいません。

◆注水量

 注水は、稚魚がまだ小さい時はあまり水を汚しませんのでごくわずかで充分です。餌の量が増え、稚魚が大きくなってきたら一日全水量の510パーセント程度の注水が目安ですが、糞抜きで減った分だけの注水でも大丈夫です。

◆濾過槽掃除

 良い水質を維持する為には、濾過槽の掃除をこまめにする事が一番重要です。目安としては、1ヶ月に1~2会程度で良いと思います。この時、100%綺麗にするのではなく、ザーッと洗い流す程度で充分です。濾材に浄化細菌が残っている方が浄化作用を継続でき、急激な水質変化を押さえられる為です。

◆濾過槽掃除の目安 

 水面に少し泡が立ってきた、長い藻が生えてきたなどの目に見えるサインが出て来たら要注意です。すぐに濾過槽掃除をしましょう。出来ればそういった状態になる前に掃除をすることが望ましいのですが、なかなかタイミングがわからないものです。そんな場合には、毎月1日と16日、という様に掃除する日にちを決めておくと良い水質を維持出来ると思います。水質が良好に保たれていると、池に綺麗な緑の短いコケが生えてきます。当然太りも良く、色つやも良く育ちます。

◆カキ殻

 []でも述べましたが、出来れば濾過槽にカキ殻を入れましょう。鯉の糞や尿は浄化の過程でPH(ペーハー)を下げます。カキ殻を入れておくと、PHが下がる時にカキ殻が溶け出して中性付近を維持してくれます。

簡単ポイント!水質管理編

注水は餌の量が増えてきたら一日全水量の510パーセントを目安にしましょう

糞抜きは毎日行いましょう。

濾過槽掃除は日にちを決め、月に12回程度行いましょう。

 [] 選別

◆一選

Aを飼育のお客様・・・飼育開始から30日を過ぎた頃に行います。

Bを飼育のお客様・・・飼育開始から23週間頃に行います。

 一選はまだ未確定なものが多い為、選別は少し甘めに行います。確実に駄目なものだけ 外しましょう。

※外す例:赤無地、白無地、白写り、奇形、極端に緋模様が少ないもの等

◆二選

 基本的には一選から15日前後に行いますが、飼育環境や成長具合によって個人差が出て きますので、様子を見て行いましょう。二選目以降は出来る限り厳しく選び、数を減らしていった方が太りも良く、型付も良くなります。また、この時期から黄写りのようなものが出てきますが、そこから良いものが出てくる事が多々ありますので外さないように注意してください。この段階でも選別が良くわからない場合は、確実に駄目なものだけ外すようにしましょう。
   
※外す例:真鯉、紅白、緋写り、白写り、坊主等

◆三選以降 

 三選目以降も定期的に選別を行って良いと思いますが、様子を見ながら外したいものが出て来たら選別するという程度でも結構です。目安としては、35回程度で充分です。

 ・選別は、良くなりそうなものを残す為に行いますが、数を減らして早く太らせるという目的もありますので、出来る範囲で厳しく外してください。早く太らせる事により型付も良く、良い結果につながると思います。
 

簡単ポイント!選別編

一選目は30日前後、(Bの場合は23週間前後)に行いましょう。

わからない時は駄目なものだけ外しましょう。

出来るだけ厳しく選別した方が結果的に良いものが出来ます。

[] 眠り病対策

 [Ⅰ]でも述べましたが、まず他魚の飼育水を入れないことが一番の予防です。また、他の池で使用したサデ、タライ等の道具を使う時も、日光消毒をする等してから使用するように心がけましょう。

◆眠り病になってしまったら

 
塩と抗菌剤か安定化二酸化塩素と温度による治療が一番効果的です。

①塩6kg/t+水産用パラザン100ml/t 水温26℃~30℃に昇温
→水量100リットルの場合(600g+パラザン10ml)
  OTC酸も抗菌剤ですが、水が濁りやすいのであまりお勧めしません。
②塩6kg/t+ビオトーク20ml/t MH-1 4050ml/t(MH-1はビオトークの賦活材です。)
→水量100リットルの場合(600g+ビオトーク2ml/t MH-1 45ml/)
 
①、②のどちらかを施し、数日間様子を見てください。

※注意点

・水の濁りがひどい場合は水換えをします。換えた分の塩と薬を追加してください。
・水温を高くすると溶存酸素が少なくなります。鯉が沢山いる場合は酸素不足で死亡してしまうことがあるので注意が必要です。大事なものを中心に残して治療するようにしてください。
 
 以上、稚魚飼育に関する基本的な要点をまとめてみました。稚魚飼育を始めてみようという方、なかなかうまくいかなかった方は是非参考にしてみてください。皆様のもとで綺麗な鯉が沢山出来ることを心からお祈りしております。